一般的に言われている「鎮痛薬」は、痛みを止めているわけではありません。
正式には「非ステロイド性抗炎症薬」といい、痛みを止める薬ではありません。
組織が損傷を受けると痛みを感じますが、損傷がおきた細胞膜で化学反応が起きると、プロスタグランジン類というホルモンのような物質が合成され組織の炎症がおこり痛みを生じさせます。
鎮痛薬といわれている非ステロイド性抗炎症薬は、このプロスタグランジン類の合成を抑制する効果があり、それによって痛みが軽減されているのです。
「痛みが楽になっているんだから問題ないでしょう」
その通りなんですけど、炎症のない痛みには理論的に効果がないということが問題なんのです。
肩こりや腰痛・頭痛などの慢性痛には、組織に炎症反応はありませんので、痛みが軽減することはないはずです。
しかし多くの人が鎮痛薬を飲んで楽になっているようです。
これにも理由があり、ひとつはプラセボ効果。
薬の作用がないのにもかかわらず、薬を飲むと身体が反応して効果が出てしまうことがあります。
もうひとつは痛みはピークを迎えると、自分の回復力で何もしなくても軽減してくるものです。
ほとんどの人が、痛みのピークの手前に薬を飲む人が多く、結果薬を飲んだ後に楽になっているので薬の効果と思ってしまうのです。
「痛みが楽になっているんだから問題ないでしょう」
その通りなんですけど、実はここからが本題「おおいに問題あるんです」
腰や背中などの慢性痛を鎮痛薬で楽になっている人の中に、内臓レベルの組織の損傷や炎症の症状が隠れていることがあるからです。
関連痛といい、痛みの原因となる部位とは、別の部位に痛みを感じることがあるのです。
狭心症・心筋梗塞で肩・首の痛み ・すい臓がんで背腰の痛み ・胸膜炎で背中の痛み ・尿路結石で胸背腰の痛みなど、命にかかわることがありますので、慢性痛なのに鎮痛薬で楽になっている場合は注意して下さい。
参考まで )
私事ですが、来院患者さんで「脊椎腫瘍」だったケースがあり、発見が早くその後元気に山登りが出来るまで回復した人がいます。
この脊椎腫瘍という病気は、悪性の場合5年生存率が10%を下回る怖い疾患です。
通院2回目に「何かおかしい・・・」と感じ、「すぐに大きな病院に行ってください」とお願いしたのです。
1週間も経たないうちに手術をし、1~2か月後には私のところにお礼にいらしてくれました。
気付いたきっかけは、慢性痛だったにもかかわらず、「薬を飲めば痛みは楽になるがすぐ痛くなる」というのです。
また、はり施術で痛みが全く変化しなかったのです。
はり施術で全く変化のない経験がほとんどなく、多少でも痛みに変化が現われるのに「全く変化なし」、何なら痛くなったでも変化なのに、それが何度聞いても「全く変化なし」だったのです。
腰に関する整形外科チェックを試しても問題なし。
つまり、腰に痛みが存在しないのです。
それ以来、患者さんの訴える痛みに関しては、何度も何度も事細かく質問し、最後は指1本で指し示すように問診するようになりました。
きっと「ウザイ!」と思われていますが、これが私のやり方です。